橋梁用伸縮装置ってわかりにくい!というお声をよく聞くので、伸縮装置に関する情報を一本化して閲覧できるページがあればよいのではないか?と思い作成しました。ご参考になれば幸いです。
もし知りたいことが載っていない、という場合は、お手数ですが、こちらまでお問い合わせをお願いします。
参考図書:道路橋示方書(平成29年11月版)

伸縮装置とは?

橋台と橋桁、又は、橋桁と橋桁との隙間(遊間)に設置されるものです。
橋梁を設計する際、橋桁が温度変化などによって伸び縮みをするため、橋桁と橋台と、また橋桁と橋桁とがぶつかり合わないように、遊間(隙間)を設けます。
この遊間を覆い、車や歩行者の走行を確保するために橋梁用伸縮装置が必要となります。

要求性能

伸縮装置は路面に露出しているため、アスファルト舗装と同様、傷みやすい部材です。
また、破損すると、桁下に漏水してしまい、支承を傷め、結果として橋梁の寿命を縮めることになります。
よって、伸縮装置は、止水性、耐久性、走行性など、あらゆる性能が要求されます。

伸縮装置の種類

伸縮装置の分類の仕方は大きく2種類あります。
【荷重支持構造による分類】と【積算方法による分類】です。

荷重支持構造による分類

突合せ型

突合せ型とは、床版遊間部にシール材またはゴムだけの止水部を設けた構造であり、床版遊間部で輪荷重を支持しない構造です。

床板遊間部にかかる輪荷重をシール材やゴムで受けているため、主に大きな荷重がかからない歩道部に使用されます。(交通量の少ない車道部にも使用されます。)

また、構造が単純なものが多く、安価でもあります。
当社の製品ではハイブリッドジョイントSSタイプが突合せ型になります。

また、歩道用の製品のうち、ハイブリッドジョイントNPSタイプも突合せ型に分類されます。

荷重支持型

荷重支持型とは、床版遊間部に鋼材を設けた構造であり、床版遊間部で輪荷重を支持する構造です。

一般的に多く使用されており、耐久性が高いため車道部はほぼ荷重支持型構造の製品を使用しています。
当社のほとんどの製品が荷重支持型となります。

主に接続部や歩道部には突合せ型、車道部には荷重支持型というような使い分けがされています。
それぞれ歩道部は歩行者が歩きやすく、車道部は耐久性が高くなるよう工夫されています。

積算方法による分類

鋼製フィンガージョイント

フィンガージョイント

主部材が鋼材でできていて、多くの場合、桁製作時に同時に製作する伸縮装置です。
製品高さは桁の厚みと同じになります。
「フィンガージョイントメーカー」というのは基本的になく、桁を製作する橋梁メーカーが直接製作することが多いです。
積算単位は重量(t)。

埋設ジョイント

埋設ジョイント

弾性部材でできていて、舗装と見た目が近い伸縮装置です。
製品によっては、舗装が表層を覆うタイプのものもあります。
舗装と連続しているため、伸縮量が小さい場合は優れた走行性を発揮します。
積算単位は体積(m^3)。

その他のジョイント

フィンガージョイント、埋設ジョイント以外の伸縮装置はすべてここに分類されます。
発注者によって「製品ジョイント」「ゴムジョイント」など呼び方が異なります。
積算単位は長さ(m)。

伸縮装置の選定方法

伸縮装置の選定の流れは以下の通りです。

1
伸縮量の計算

まず、伸縮量を計算します。
伸縮装置を設置する橋台・橋脚部ごとに伸縮桁長を求め、係数をかけて算出します。
標準気温域か寒冷地気温域か、橋種が何かによって係数が異なります。
伸縮量=伸縮桁長(mm)×線膨張係数×温度範囲+余裕量(20%または10mm)

2
床版遊間の確認

床版遊間は図面から確認できますが、現場調査にて確認したほうが間違いがありません。
現場調査では、地覆部の遊間は正しくないことが多いので、できるだけ桁下側から測ります。
標準遊間(mm)=現場遊間(mm)+(調査時気温-標準気温)×伸縮桁長(mm)×線膨張係数
また、フィンガージョイントでは注意が必要です。
参考:伸縮装置博士を目指して! ~「フィンガージョイントの調査は難しい」編~

3
その他設計条件の確認

その他、地震時移動量、たわみ量、クリープ、乾燥収縮などがあるか、橋軸直角方向の移動量があるか、鋼床版など特殊な床版であるかなどの条件を確認します。

4
製品の検討

上記条件を確認できたら、具体的にどの製品が適切か検討します。
伸縮装置選定に関する簡易マニュアル

伸縮量の計算は複雑で難しいので、弊社では【自動選定ツール】を公開しています。
伸縮桁長の入力をして、その他条件を選んでいくと、自動的に伸縮装置が選定されるものになります。
ぜひご活用ください。

代表的な伸縮装置

代表的な伸縮装置を製品名順にご紹介します。

製品名メーカー名伸縮量適用最大遊間関連リンク
ウェイビー・フック・ジョイントクリエート中川20mm~230mm~519mm製品ページ
SEFジョイント100横河NSエンジニアリング60mm~320mm~560mm製品ページ 製品カタログ
STジョイントショーボンド建設40mm~80mm~200mm製品ページ 製品カタログ
SPジョイントニッタ20mm~70mm~176mm製品ページ
製品カタログ
MMジョイント西日本高速道路メンテナンス九州40mm~75mm製品ページ 製品カタログ
KMAジョイント橋梁メンテナンス60mm~320mm~560mm製品ページ 製品カタログ
スムースジョイントYMF型横浜ゴム20mm~70mm~194mm製品ページ 製品カタログ
ダイヤフリージョイント日本橋梁工業40mm~200mm~630mm製品ページ
ハイブリッドジョイントクリテック工業20mm~600mm~1230mm製品ページ
ブロフジョイントNx型東京ファブリック工業20mm~100mm~236mm製品ページ 製品カタログ
マウラージョイント日本80mm~800mm~1600mm製品ページ
mageba KMジョイント川金コアテック80mm~960mm~1840mm製品ページ
メタルガージョイント中外道路20mm~110mm~290mm製品ページ
製品カタログ
メタルジョイントKC-A秩父産業20mm~70mm~185mm製品ページ 製品カタログ

上記以外にも、各社、様々な製品を扱っています。
詳細については各メーカーにお問い合わせください。

よくある質問

伸縮装置の施工にはどのような設備が必要ですか?

既設伸縮装置を撤去するためのブレーカー、新設伸縮装置を吊り下ろすためのクレーン車、溶接道具など、必要なものは多岐にわたります。
伸縮装置Naviの記事で段階ごとに紹介していますので、参考にしてください。

伸縮装置取替の一般的なタイムスケジュールを教えてください。

既設伸縮装置撤去に2~3時間、新設伸縮装置設置に1時間、コンクリート打設から養生で3時間程度が一般的なタイムスケジュールになります。
伸縮装置Naviの記事も併せてご覧ください。

伸縮装置の後打ちコンクリートは、どのようなものを使えばいいのでしょうか?

新設の場合は、床版のコンクリートと同程度の強度のコンクリートにしている場合が多いです。
補修(取替)の場合は、交通規制の時間の縛りがあるので、3時間で強度が出る超速硬コンクリートを使用するのが一般的です。
伸縮装置Naviの記事にてコンクリートに関する注意点を紹介しています。

もっと色々知りたいという方へ

伸縮装置に関する疑問を覚えたとき、誰に聞いたら良いか迷いますよね。
そういうときは、ぜひ弊社にお声かけください。
・歩掛がほしい!
・製品の図面・写真から、どこのメーカーのものか知りたい!
など、取引に直接つながらないようなお問い合わせも歓迎いたします。

特定のメーカーに聞くのはちょっと…という方には、こちらをご紹介します。
伸縮装置Naviでは、よくある疑問に対して答えた記事を公開しております。

伸縮装置について、少しでも理解が深まれば幸いです。
何か不明なことなどあれば、ぜひお声かけください!