こんにちは、工務部の山嵜です。

今回は『伸縮装置の施工』第一弾として、施工の際の注意点について、~準備編~と称してご説明します。
伸縮装置工というと、橋梁上部工の中でもニッチな工種なため、お客様からは「施工についてよくわからない」「伸縮装置は初めて」といった声を頂きます。

今回は、伸縮装置施工準備の際に注意すべき点を3つの視点からご説明します。

①新設or補修?
②後付けor先付け?
③気候条件は?


①新設or補修?

まず重要なのが、新設工事なのか、補修工事なのかということです。

新設工事の場合は、桁を製作する際に事前にアンカー筋を設置しておく必要があります。
伸縮装置据付け工より前の段階での段取りが不可欠で、桁を製作するメーカーと、伸縮装置を製作するメーカーと共同で製作を行う必要があることが特徴です。

新設なので現場調査は不要と思われるかもしれませんが、実際に作成した桁の実測値と設計値に誤差がある可能性もあるため、現場調査は不可欠です。

補修工事の場合は、事前準備として、現場調査の上、現場に合わせた製品の製作が必要となります。
加えて、施工の際の条件がシビアになります。なぜなら、一般的に伸縮装置の工事は、限られた規制時間内に、斫りからコンクリート打設までを1日で仕上げるため、工程管理が重要となるからです。
(既設伸縮装置撤去と新設伸縮装置設置・コンクリート打設とを別日に施工する場合もあります。)

後述する後打ちコンクリートに「超速硬コンクリート」という3時間で強度が出る特殊コンクリートを使用するなど、施工時間や工程計画上の工夫が必要になるのが補修の際の特徴です。

なお、伸縮装置工の積算単位は「普通型・軽量型」「○車線相当」の区別があります。
単純に考えると、施工箇所が2箇所の場合は2車線相当を適用するのが正しいと解釈したくなりますが、土木コスト情報の設定にある通り、施工班1班が2車線施工を行う場合にのみ2車線相当は適用されます。

施工箇所が2箇所であっても施工班の構成が1班であれば1車線相当が妥当となるため、注意が必要です。

例:A1とA2を1車線ずつ(計2か所)を施工班2班で一日間施工する場合

施工班1班につき2箇所行う場合は2車線相当の金額が適用可能ですが、ほとんどの場合困難で、一般的ではありません。
施工班1班につき1箇所の工事の場合は、1車線相当の金額を適用します。
間違えやすい部分ですので、設計図書をよく確認するようにしましょう。

②先付けor後付け?

同一工事に舗装工が含まれる場合、検討する必要があるのが、伸縮装置を「先付け」にするのか、「後付け」にするのかです。

メリットデメリット
先付け工法舗装工の工程に左右されない。
舗装の防水層の縁を切らない。
据付高さ確認が後付け工法より難易度が高い。
補修工事の場合、舗装撤去時に後打ちコンクリートが汚れる。
後付け工法高さ出しが比較的容易である。
仕上がりが良い。
カッター工、合材撤去、コンクリート打設などによって舗装が汚れるため、養生が必要。

先付工法での据付

一般的には、新設工事では先付けが多いです。
反対に、補修工事では後付けが多いというわけではなく、先付けの場合もあります。

施工条件や前後の工種・工程、発注者の意向を確認するなどして選ぶと良いでしょう。
一般に、西日本では後付が多く、東日本では先付が多いと言われています。

③気候条件は?

橋梁は温度変化によって桁が伸縮します。その伸縮を吸収するのが伸縮装置の役割です。
ここでネックになるのが、施工時の床版の「遊間量」です。

通常、設計図に記載されている床版の遊間は、標準温度時のものです。
つまり、施工時期によって、設計図よりも遊間が広い状態(冬季)、狭い状態(夏季)になるので、現場条件に合わせて伸縮装置を設置しなくてはなりません。

たとえば、冬季に伸縮装置を、製品幅を圧縮した状態で設置すれば、気温上昇に伴い、製品幅が狭くなることで、製品の許容伸縮量を超えてしまい、製品が壊れてしまいます。

従って、メーカーは、現場・施工時期に合わせて「予備圧縮」と呼ばれる温度変化に合わせた伸縮装置幅を設定しています。
設計図の作成や積算では考慮されませんが、実際の施工を行う際はとても重要な要素となりますので、製品の発注の際は伸縮装置の施工時期を必ず意識しておきましょう。


いかがだったでしょうか?
伸縮装置の「よくわからない」イメージが払しょくされ、皆さんにとって少しでも馴染みやすくなっていただければ嬉しく思います。

御不明点がございましたら、弊社までお気軽にお問い合わせください。

平成30年2月 工務部 山嵜